黒沢健一「Banding Together in Dreams」特集 -NEOWING
黒沢健一「Banding Together in Dreams」特集
"こんなアルバムを待っていた気がする。"

黒沢健一のニューアルバム「Banding Together in Dreams」が6月12日にリリースされました!
前作「Focus」以来、約4年振りのオリジナルアルバムとなる今作。
「Focus」の時は“言わずもがなの“名盤”です!”なんて書いちゃいましたが、今回ももまた声を大にして言いたい。
今回の「Banding Together in Dreams」は傑作アルバムなんです!

完成されたポップス・アルバムだった「Focus」とは打って変わり、今回はバンドサウンド、アルバムの冒頭を飾るのは、イントロから心躍るサウンドが印象的な「A Return To Love」、爽やかな風が吹き抜けるような「Summer Song」、ライブでも既に披露されている、心に刺さる名曲「Rock'n Roll Band」など、黒沢健一の生み出す楽曲の良さとポップエッセンスがギュッと濃縮された10曲の楽曲が収録されています。

そして特筆すべきは作り手側が心から楽しんでこのアルバムを作ったドキドキ感が、サウンドを通して聴き手にも伝わって来るアルバムに仕上がっていることです。

今回は約20年ぶりにL⇔Rの歴代のメンバー全員(木下裕晴、黒沢秀樹、嶺川貴子)が各楽曲でミュージシャンとして参加している点にも要注目です!

とりあえず気になるなーと思ったら、迷わず手に取ってみましょう!そして聴いてみましょう!

そしてこのアルバムを引っ提げて、7月2日の新潟GOLDEN PIGS BLACKを皮切りに4年振りのバンドツアーであるLIVE TOUR 2013 "Banding Together " が決定しています。
これは見逃せないライブになりそうですよ。

まずはじっくりとこのアルバム、「Banding Together in Dreams」を堪能しつつ、ライブを楽しみに待ちましょう。



黒沢健一オフィシャルサイト
http://www.k-kurosawa.com/

■Profile

黒沢健一
1968年8月11日生/B型
19歳で南野陽子、島田奈美などへ楽曲提供やCM曲提供など、作家としてデビュー。
1991年 弟 秀樹、木下裕晴と共にL⇔Rを結成。
1995年オリコンNO.1シングル「Knockin' on your door」を初めとした純度の高いポップスを送り続ける。
1997年活動休止までレギュラーラジオ番組・全国ツアー、など精力的に音楽活動を行う。L⇔R活動休止以降、ソロ活動開始。シングル、アルバムのリリース、ツアーを行い、3枚目のアルバムリリースとツアー終了後に、制作意欲が爆発。
2003年〜2005年にかけてcurve509、健'z、Science Ministry、MOTORWORKSと4つのバンド、ユニットで活動の幅を広げる。
また、森高千里・湯川潮音などへの楽曲提供、徳山秀典・ hi*limitsなどのプロデュースなど活動は多岐にわたる。

■Live

LIVE TOUR 2013 "Banding Together"

7月2日(火) 新潟GOLDEN PIGS BLACK
7月3日(水) 仙台CLUB JUNK BOX
7月8日(月) 梅田CLUB QUATTRO
7月9日(火) 名古屋CLUB QUATTRO
7月10日(水) 広島CLUB QUATTRO
7月12日(金) 福岡イムズホール
7月17日(水) 赤坂BLITZ

【BAND MEMBER】
  • Vo.Gt. 黒沢健一
  • Keyboards. 遠山裕
  • Drums. 岡井大二
  • Guitars. 菊池真義
  • Bass. 山口寛雄

※詳細はオフィシャルサイトをご確認下さい。


なんかあるじゃないですか、楽しい旅行だったのにみたいな(笑)

黒沢: 最後の頃は夢中でやっていて、完成させなきゃっていう、毎回、常になんですけど(笑)、入り込んじゃってるから、あっ、気がついたら出来てた!やったー!みたいな感じですかね(笑)。 たぶんいろんなことを考えているんでしょうけど、いつもアルバムの最後の方はちょっと冷静にはなってないんでしょうね。

――その感覚って普通に暮らしているとよくわからないんですけど、その時ってどんな日常なんですか?テレビとかも見たりはしないものなんですか?

黒沢: 見てますね。

――普通に生活もしててレコーディングもしてるけど、振り返ると音楽だけが残ってるみたいな?

黒沢: うーん、あんまり覚えてないんですよね、テレビを見てるとかも。
何か見ながら考えてたりとか、食事をしながら考えてたりとか、だからもう、あ、これは絶対これはこっちの音の方が良いとか・・・、なんでしょうね、あっ、思い出して来た(笑)。
ちょっと時間が経って聴いたりとか、スタジオから終わって帰って来て聴いた時のと音の質感が違ってたりするんですよ。
そうするとすぐ電話して、ちょっと時間が経って聴いてみると、やっぱり違って聴こえたんで、もうちょっと下げましょうみたいな話をしてたりとか、そんな感じですよね。
ちょっと、アブナイ感じ?(笑)、迷惑な感じというか。

――じゃあ、ずっと何をしていても頭の中で音が鳴っていたりとか、音のことを考えている感じなんですね。

黒沢: うーん、後もう少しでミックスが上がるとか、そんな感じの時はそうですね。
ただ「Focus」の時って、レコーディングのスケジュールが3ヶ月とかで、その期間内のスケジューリングでやっていたもので、3ヶ月間だけそういう感じだったから良いんですけど、今回は特に期間っていうのも無く、何となく漠然とライブツアーの前に出せれば良いなっていう中で始まっていたので、結構長いタームでちょっと変な人になってたかなって感じがしますけどね(笑)。

――周りの人から様子がおかしいって言われなければ大丈夫じゃないですかね(笑)。

黒沢: エンジニアの永井さんもどこかしら俺と同じで、ハマり込むタイプなんですよ。
何度もミックスを出して来たりとか、やっぱり一日経って聴くと、ちょっと違うとかになって、「昨日のはちょっと違うかもしれないんで!」とか、毎日やり取りがありましたね。

――確か「V.S.G.P」の時もそういうふうな感じで合宿されていましたよね。

黒沢: そうですね。確かに、アブナイですよね。

――いえいえ大丈夫です。そのお陰でこんな良いアルバムが出来て、私達は良かった!って感じなんですけど(笑)。

黒沢: (笑)、最終的には聴いてくれた方が楽しんで頂ければ一番良いなっていうことを望んではいるんですけど、結局どこかしら客観性を持たないといけないと思いながらも、入れば入るほど、どうしてもそれを失って行ってしまうので、それが余りにも深くならないうちにアルバムを完成させなくてはというのはありますよね。

――私達は漠然と新しいアルバムが出たーっ!て聴いているわけですが、作られている側の方はそんなふうに寝食を忘れて一生懸命作られているんだなと思いますね。

黒沢: いやもう、そうじゃない時もありますよ。まぁ、これはこんなもんでみたいなのもあるし(笑)。
でも今回のアルバムは作業自体が楽しかったんですよね。
作業も楽しかったし、作る行為、ジャケットとかビジュアルもそうだし、動いているもの自体がとにかく楽しくて、終わってしまって悲しいみたいな(笑)。

――(笑)。

黒沢: なんかあるじゃないですか、楽しい旅行だったのにみたいな(笑)。 そういう感じがちょっとありますね。 振り返ってみるとみんなで頑張って作った感はありますよね。

――その感じで引き続きすぐに次のアルバム作って頂けると(笑)、でもそれはそれでまた違うんでしょうね。

黒沢: なんかね、ワガママでこれだけ今回楽しかったから、また同じことをやろうって気にはならないんですよ。
また違うことをやらなきゃいけないし。
同じように楽しみたいんだけど、やっぱり同じく楽しんだ仲間とまた同じことをやっちゃって、これは前のパターンだねってなっちゃったら、また楽しめないから。
結構、初めてだから楽しいことってたくさんあるし、ドキドキしたりするんだろうなって思うんです。

――なるほど、そうなんですね。今回のアルバムはそのドキドキ感が特に入っている気がしますよね。 遠山さんのピアノがすごいですよね、スパークしてる感じがします。

黒沢: はい。

――上手なのは元からですけど、今回はどうしたんだろう?ってくらいすごいですよね。

黒沢: (笑)、今までのアルバムって遠山さんと僕でアレンジして、プロデュースのある部分は関わって頂いてるって感じで作っているんですけど、今回は僕と遠山さんでまずベーシックを作ったデモテープを信頼出来るメンバーに投げた感じがあるんで、逆にもう遠山さん自体はプレイヤーになっちゃうんですよね。
後、アレンジャーとしての自分を捨ててプレイヤーとして楽しもうっていうのがテイクに表れていて、そうじゃない「Focus」の時みたいに、自分達が作ったアレンジどおり決まった形でやろう、それで音を作ろうって感じでのプレイとはかなり違うんですよね。

今回はドラムに岡井大二、ベースに木下裕晴、そして僕がギターで、要は全員で演奏するまで、曲は決まっているんですけど、デモテープで大体の構成とかも出来ていて、一回、バーッと聴いて、譜面を見て、こんな感じの曲なんだけど、ではやりましょうって出た音が全てなので、あんまり考える暇がないというか、一生懸命やって出来た音が今回のベーシックに入っているので、ベーシックに関しては計算はあんまりしていないですよ。

――何気にすごいフレーズを弾いていたりするじゃないですか、こんなことを言うのは失礼ですが、改めてすごいなっていう、そのピアノの音がキラキラ感というか華やかさみたいなものが、このアルバムの特徴という気がするんですよね。
今回のアルバムを最初に聴いた時の1曲目の印象がキラキラしてるなっていうものだったので、そこはやはり遠山さんのプレイがとても反映されているのかなと思いましたね。ライブがとても楽しみですよね。

黒沢: 楽しみですね。

――どんなことになるのか!?

黒沢: わかりません。アハハハ。 ただこの間、遠山さんと話をしていて、僕と遠山さんが大人にならいとねって話をしましたね。

――(笑)。

黒沢: 何でしょうね、その時によってそれぞれ立場があるんですよ。
岡井さんとか他の人達が好きにやって良いんだけど、僕らがあんまり楽しみ過ぎちゃうとね。
「Focus」の時とかはアレンジャー、プロデューサーが僕達側だからみんなをまとめたサウンドを作らないとねっていうのとか、だけど今回は僕達がベーシックを作った後、他の人達はそのキャラクターで好きにやってもらおうよっていうのが、たぶん今回のやり方だと思うので、他の人が突っ走っても自分達でちゃんとやろうねっていう感じ(笑)。

――誰かがちゃんと見てないと(笑)。

黒沢: (笑)見てないと、暴走し出すと、これ曲にならないかもしれないぞみたいな。
岡井さんのドラムとかって毎回違うことやるし、山口君は初めてだしなぁみたいな。

――それは見逃せないですね。ファンの方はしっかり見なきゃという感じですね。

黒沢: はい、だからしっかり練習して望みたいと思っています(笑)。


これは車の中で聴けるCDに作りたい

――今回ってアルバムのタイトルの「Banding Together in Dreams」はどういうところから名付けられたんですか?

黒沢: これも本当に流れで、“Focus”ツアーの時にバンド・ツアーだったし、去年から次のツアーはバンドでやろうよって話になって、「Rock'n Roll Band」って曲があったりとかしたんで、事務所のジョージさんとも話して、“Band”って言葉が今回、気になるよねっていうのが、お互いにあったんですよ。
そして後、「Dreams」って曲があったりとかね。

何かそういうキーワードが思い浮かびつつ、何となくこんな感じでスタジオでデモテープを録ったんですよ、そんな途中経過報告的なことを何回かやっていて、“Band”って言葉が引っ掛かるよねとか、バンドツアーがあるよねっていう中で、“Banding Together”って言葉が出て来た。
そして“in Dreams”って言葉も出て来て、“Banding Together”、何かをまとめる、何かを結んである感じ、そうすると花束とかっていうイメージが出て来たりしたんです。

そしてたまたまジョージさんが去年アメリカに行って来たんですけど、アメリカのナッシュビルの方で世界最大の音楽フェスティバルがあるんですよ。
昔、ナッシュビルとかメンフィスとかアメリカの南部に実際に自分も行って、ロックンロールとか自分が今まですごく好きだったアメリカの音楽とかに影響を受けた、その場所に行ってすごく感動して、自分の人生のターニングポイントになった旅行をしたこともあって、そこにジョージさんが去年行って来たんです。
僕も以前に行ったような場所の写真を二人で見てて、わー!アメリカだ!南部だ!その場所知ってる!みたいな話をしてて、何かアメリカンな感じのいろいろなことが思い出されて来たんですよ。

アメリカでバンドでツアーって言ったらワゴン車があってさ、ドラムキット詰め込んでさみたいな。
そんなとめどない話をデザイナーさんとかを交えて話してて、その時、僕達は雑誌の取材で本を作るってことで、結局は出なかった本だったんだけど、スタイリストの人、カメラマンの人、みんなでナッシュビルとメンフィスにカレンダーの旅に行ったんですね。

もう一度、その連中と旅に出てジャケットを作ったら面白いねってアイデアが出て来て、そしてみんなを集めて、今回、「Banding Together in Dreams」っていうタイトルで、アメリカの話とかをして、「Rock'n Roll Band」っていう曲があって、“Banding”だと花束ってイメージがあってという話をしたところ、「あー、なんかそうだよね」ってみんなわかるわけですよ。

周りからしてみると、何を言ってるかよくわからないかもしれないけど(笑)、「そのワゴン車って何色?」「何かちょっとクリーム色かもしれないし、黄色かもしれないし」「あ、そっか」「何が積み込んである?」とかね。
そういうみんなのイメージを一つビジュアルにしようようってジャケットを作って、みんなで旅に出掛けて、レコーディングの方も昔のメンバーがまた集まってくれたりとかして、みんな言葉には出来ないんだけど、全てが一つのものに向かって行った、そういう不思議な感じっていうのはすごくありましたね。

――今回のジャケ写はスタイリッシュですよね。ここでちょっとお話しが出たところで、きっと気になっている方もたくさんいらっしゃると思うんですが、今回のアルバムには歴代のL⇔Rのメンバーの方達が参加しているんですけれども、こちらはどういう経緯で誘われたりしたんですか?

黒沢: 本当に偶然というか、元々最初のセッション、試しにみんなでレコーディングしてみようっていうデモテープ録りの時は木下君が居たので、ベースで彼が参加してくれてる曲が多いんですけれども、「Many Things」って曲を作ってる時に、これは秀樹のギターが入ったら面白いなと思って、残念ながら彼はスタジオには来れなかったんですけど、「こんな感じのギターはどう?」って言って参加してくれて、嶺川さんはたまたま去年かな?湯川潮音さんから電話が掛かって来て、「黒沢さん、聞きたいことがあるんですけど、黒沢さんって、昔、嶺川さんとバンドをやられていたことがあるんですか?」って聞かれたから「あるよー、なんで?」って言ったら、「嶺川さんと一緒にライブをやることになって、リハーサルをしてて、今は休憩時間なんですけど、黒沢さんと前にバンドをやっていたという話を聞いて驚いちゃって、今、代わりますから」って言って、久し振りに「あー!元気ー?」みたいな。

そして連絡先を交換して、その時は「久し振りだから、お茶でも飲もうぜ」なんて言って、それで電話は切ったんです。
その後また去年スタジオにレコーディングに行ったら、今回のアルバムは基本的にコーラスは僕が全部やってたので、エンジニアの永井さんが飽きちゃったみたいで、「黒沢さん、なんかさ黒沢さんのボーカルばっかりじゃなくて、女性の綺麗な声でハモったらどうですかね」みたいな話を言ってて、あっ、ここはこういうタイミングだから嶺川さんにちょっとオーダーしようと思って、メールをしてみたら、全然OKよっていうことで。

なかなかそういうふうな曲が揃うことが、今まで無かったし、避けてたとかそういうわけじゃないんですけど、無理しないでみんなが集まれたっていう、そういうタイミングなんだなぁとか思って、最初にL⇔Rのメンバー全員に頼もうとか思ってたわけじゃなくて、流れに沿って行ったら、こういうふうになったんですよね。

――それってすごいですよね。

黒沢: うん、だからみんなに言ったんですよ、ちょっと別件の連絡があって、「アルバムが出来て、今回さ、まぁ、一緒に演奏してる曲はないんだけど、みんなが参加してくれたんだよね」って、みんなが「えー!すごいね!」って(笑)。
「よく合ったね」って、そうなんだよね。

――じゃあ、一緒にやるぞ!っていうよりも、それぞれの方に合った曲があってということですよね?

黒沢: うん、計画が先にあったわけじゃなくて、何かこう曲があって、自然にそれを作って行ったら呼ばれたっていう感じっていうか。

――なるほど、L⇔Rは元々バンドでしたし、今回、バンドのアルバムだしということで、楽曲もオールキャリアを振り返る的なところがありますしね。

黒沢: 結果的に後付けになっちゃった感じなんですけど、何かそういうタイミングで作ったアルバムでこういうことなのかななんて思いますけどね。

――不思議ですね。

黒沢: うん、いろんなことがすごく不思議でした。
それだけじゃないですけど、いろんなタイミングというか、合わない時って全然合わなかったりするじゃないですか、特に理由がないけど、別に避けてるとかじゃないですよ(笑)。
何となく合わない時とかハマらない時とかハマらなかったりするし、そういうのが今回はなかったですね。

――何か曲に呼ばれた感がありますよね。曲に合わなければきっと・・・。

黒沢: そうなんですよ。きっと実現しなかったろうし。

――でもそれによって聴いている人もクレジットを楽しく見たりとか、このベースはって思ったりっていうところで二度三度楽しめるようになっているというのもありますよね。
華やかな感じになりましたよね。

黒沢: はい、そうですね、お陰様で。

――今回のアルバム最初に聴いた時に思ったのが、あくまで個人的なイメージですが、黒沢さんのソロの楽曲ってちょっと寒い時に聴くことが多いんですよ。そしてL⇔Rは初夏になると聴きたくなるんですね。

黒沢: うん、うん。

――今回のアルバムってこれからの季節に聴きたくなる曲が入ってるなと思ったんですね。
そうやって考えると、初夏に聴きたくなる感じはL⇔R以来だなっていうのは個人的に思ったんです。

黒沢: 陽が差してる感じがね(笑)。
確かに冬場が多い、「Focus」なんかもイメージが冬な感じですよね。

――あれはまだ寒い時期の春なんですよね。なのでそういう意味で昔のこととかをちょっと思い出していたんですよね。個人的には1曲目の「A Return To Love」がすごい好きですね。

黒沢: ありがとうございます!良かった!
エンジニア・プロデューサーの永井さんと作品を作る時、大体、彼が音を聴きながらたぶんミキシングはどういう落としどころにしようかなとか、彼なりのイメージでいろいろ考えているんですね。
「黒沢さん、俺ね、これは車の中で聴けるCDに作りたい」って言ったんですね。
「どこに車で行く時にも、買い物に行く途中でも良いんだけど、ガッとCDを入れてさ、何か海沿いに出て来たぞ!みたいな、何かそういうアルバムにしたいな」って、独り言のように(笑)。

――(笑)。

黒沢: そうなんだ・・・みたいな(笑)。
あぁ、何かわかるなって、「音はそういう感じで良いですか?」って言うから、「一つ、そんなイメージで」って。
それで「Summer Song」を自分でミックスして、車に乗せて聴いて、俺の車でこの音を鳴らす!みたいなのが(笑)、永井さんの中ではあったんでしょうね。
そういうイメージっていうのがあったから、たぶん高橋さんが仰ったような初夏だったり、クルージングな感じだったり、曲によったらそういうものが含まれていると思いますよ。

――そんな一生懸命、車で曲を掛けて作って頂いているとは思わなかったですね。

黒沢: きっとみんなが自分にとってこのアルバムをどういうふうに作りたいかっていう想いがあって、まぁ、僕の曲があったりとかしたんだろうけど、そういうものを本当に“Banding Together”じゃないけど、みなさんのそういう力とか想いとかが一緒になって出来上がったアルバムで、それは僕のソロアルバムでもあるんだけれども、そういうバックグラウンドにいる方々の想いだとかっていうのもすごく反映されているアルバムだと思うから、そこら辺も含めて聴いてもらえると、すごく楽しめると思うんですよね。

――みんな、それぞれのミュージシャンだったり、関わっている方々が手塩に掛けて作っている感じなんですね。

黒沢: うん、そうですね。

――「Summer Song」もとても良い曲ですよね。でもアルバムの中では「A Return To Love」が一番好きですね(笑)。

黒沢: ありがとうございます!
1曲目は永井さんと悩んで、1曲目は「A Return To Love」があるんだけど、「So What?」も良いなぁなんて言って、うーん、でも俺は1曲目はこっちが良いやって。

――そうだったんですね。「So What?」も遠山さんのピアノが凄すぎですよね。

黒沢: 遠山さん、「So What?」はあれでもギターがデカイって言ってたけど(笑)、ピアノも充分デカイですよね?(笑)
元々、あの曲って遠山さんと僕で演奏してる曲なんで、このレコーディングの状態になる前、かなり遠山さんのピアノがあの曲の中心を占めてたんですね。
だからそういった意味では遠山さんのピアノっていうのが中心の曲なんだけど、ギターとかドラムが入って来た時点で、バンド感が出たと僕は思うんです。
実は2種類テイクがあったりしたんだけど、結局一番バンドっぽいこっちのテイクにしました。

――このピアノはライブでどうなるのかな?なんて思いますよね。

黒沢: もっと派手に弾くかもしれませんね(笑)。

――それもまた楽しみですよね(笑)。そして「Rock'n Roll Band」なんですけれども、この曲は最初に聴いた時から印象として個人的にやるせない曲なんですよ。

黒沢: あぁー。

――あの曲を聴いていると自分が10代で地方にいて学校の友達とライブに行っていた頃のこととかを思い出すんですよね。そういう曲ってあんまりなかったような気がしたんですよ。
詞も歌詞を見なくても頭に入って来る歌詞で、歌詞の内容もまた黒沢さんの作品の中では今までなかったタイプの楽曲で、そしてこのアルバムの核はこの曲なのかなっていう気がすごくしたんです。この曲はいつぐらいから出来ていたんですか?

黒沢: それこそ約4年ぐらい前とかですかね、アコースティックギターで軽くデモテープを録らなきゃいけないっていうか(笑)、そういう仕事みたいなのがあったんですよ。
その時についでだから、これデモテープで録っちゃえと思って、その時に弾いて作ったんですね。

自分にとってはすごいシンプルだし、歌詞も頭から最後までバーッと書けちゃって、レコーディングにあたって、てにをははちょっと直しましたけど、今回のアルバムじゃないけど、あれ?何だこの曲はっていう。
気が付いたら出来てたみたいな曲で、最初はよく意味がわからなかったんですよ。

なんで俺、この曲を書いたんだろう?何の関連性があるんだろう?って、あんまり考えていなかった。
何かポッと出来た、でもこの曲が出来た意味はあるんだろうから、ライブでやってみようと思って、遠山さんと二人で、どこかのライブ会場で初めてやってみたんですね。

そしたらPAをやっている舩橋さんっていう人が来て、「健一、あの曲、すっげー良い曲だね」って、で、舞台監督、うちの事務所の社長ですけども、「すっげー、あれ良い曲だよ」と。
どうもなんで出来たんだかわからないけど、何か意味はあるんだろうなと思って演奏した曲を彼らが良いって言ってくれて、その瞬間に、あぁ、これは彼らの曲でもあるし、僕の曲でもあるし、極端な話で言ったら聴いて頂いた高橋さんの曲でもあるし、音楽が好きでこういう仕事を始めて、いろんなことがあって、ここにこうやっている人達みんなの体験や全てに対して、俺がたまたま書いただけで、みんなに対して共通項がある一つの曲なのではないかっていうのを思ったんですね。

だから発表するべきなんだと思ったし、この曲がものすごく客観的に見えたんです。
そういうことって前にもあって、まるで自分の曲のようだって言ってもらえる曲っていうのがあるんですよ。
そういう時ってなんよくわからないんですよ、自分が何かの意志を持って、共感してほしい!と思って書いているわけでもないし、何かの意味を自分の中で追って完成させたものでもないし、ポロッと出て来たものだったりしたので。

――じゃあ、こうしてやるぜ!って感じではないんですね。

黒沢: うん、うん。

――意図せず・・・。

黒沢: 意図せず。

――以前、グローブ座でのライブで聴いた時もこの曲は何かちょっと立ち位置が違う感じがしましたよね。この曲は出るべくして出た曲なのかもしれないですね。でも狙っていないのがすごいですよね(笑)。

黒沢: こういう曲が書きたくて一つ形になったんですっていう話しでも言えれば、何か考えてたみたいでカッコイイですけどね。

――(笑)。

黒沢: (笑)、聴いて、あれ?みたいな感じだったから、こういう曲ってあるねみたいな。

――普段、曲を書く時ってこういうふうにしようとかっていうのはあまり思わないものなんですか?

黒沢: あの、悔しいんですけど、こういう曲を俺は作れるぞと、最終的に自分で出来ると思いたいんですけどね。そういう試しがないです。意外なものしか出来ないです、アハハハ。

――そうなんですか!?

黒沢: うん。

――いやー・・・、そうなんですね。


なんで音楽をやってるのかって言ったら、やっぱり魔法じゃないの?みたいな(笑)

黒沢: 作曲のオファーの仕事ってあるじゃないですか。
例えばこういう曲でこんなタイプでテンポがこうでって言われて、あー、なるほどなって思って作るんだけど、出来上がってみると何となくちょっと違うんじゃないの?みたいな曲になっちゃうんですよね。

――でもそれでもオファーする方はそれで良いってことになるんですよね?

黒沢: 結構、言われるのは、イメージと違ったんですけど良いですって言われることは多い(笑)。
自分は一生懸命イメージに合わせようと思ったりはしますけど、それはよく言われたりしますよね。

――そういうものなんですね。

黒沢: こういう曲を作ろうと思ってるのに何か違った方向に行っちゃう時はもうしょうがないなと思って、この曲はこう行きたいんだろうなと思って、だから途中まで作って後は放って置くとか、そうすると後は自然にまとまったりとか。

――じゃあ、あんまり作り手のコントロール下にはないものなんですね。

黒沢: うん、ない・・・ですね。

――そういうものなんだなって伺うとビックリしますね。

黒沢: ある人もいるんだと思うんですよ。
自分の思うとおりに出来たっていう、その気持ちもわかるんですけど、僕も今回のアルバムは自分の思いどおりに出来たって、つい言いそうになるんだけど、思いどおりイコール何かって言われたら、結果的にこのアルバムが大好きってことなんだと思うんですよ。
だから僕はこのアルバムは、自分の好きなアルバムを作りたいってことに関しては、すごく良いアルバムだと思うんだけど、最初に狙ってたところにちゃんと入ったかどうかってことに関しては、途中から曲の行きたいように任せて行ったりとか、流れに任せて最終的に落ち着かせた感じはありますよね。

――なるほど、でもファンの方達は黒沢さんが楽しく作ってくれて、その作品を聴ければ、楽しめるんじゃないかなって気もするんですけどね。

黒沢: そう思って頂けるとありがたいですけど。

――だってこんなすごい良いアルバムが出来ちゃったのに、でも意図せず出来上がったというは不思議な感じがしますよね。でも今回のアルバムって後半戦はしっとりした曲が多いですよね。

黒沢: うん、うん。

――「Lay Your Hands」は確かに音源になっていますよね?

黒沢: はい、そうですね、配信で。

――この曲を改めて今回のアルバムに入れようと思ったのは、どういうところからだったんですか?

黒沢: これは俺が考えたわけじゃなくて(笑)、今回、他にもいっぱいアルバム候補曲を録っていたので、僕は「Lay Your Hands」はもうリリース済みって勝手に自分の中で思っていて、後ライブでも何度も歌ってるし、いいやって勝手に思ってたら、永井はじめさんがですね、「何で入れないんですか?」みたいな。
「えっ!?いやだってライブバージョンでリリースは・・・」「いや、そういう話じゃないでしょ、ちゃんとスタジオバージョンで作りましょうよ」「あぁ、そうですか」と。

僕の中では勝手にピアノと歌で世の中に発表して、ライブでもやってるし、みんなに聴いて頂いてるしっていう気持ちでいたんだけど、永井さんとしてはプロデューサーでもあるし、違った形で人に届けるべきだって気持ちがあって、じゃあ、どんなアイデアがありますかって、まずドラムはこんな感じで、ピアノはこんな感じで、まぁ、彼の中のイメージですよね。
その中でのアレンジメント、プロデュースはどちらかというと彼がしているんですよね。

――ライブのバージョンは広がりのあるサウンドでしたが、こちらはもっと側で歌われている感じがしますよね。そういうふうに聴くとよりパーソナルな感じがしますよね。
この楽曲もこのアルバムの中では印象的な1曲だと思います。そして「Dreams」ですが、この楽曲はこの間のグローブ座で演奏された多重録音でのサウンドの流れから来ているものなのですか?

黒沢: そうですね。レコーディング自体はあの流れの中で進めてました、ただ「Dreams」は何となく次のアルバムのまた一つポイントになる曲だろうなと思っていたので、前の「Alone Together」ではなくて、今回のアルバムの曲としての気持ちで作っていましたね。

――なるほど、この曲を入れたことによって、アルバムの中に黒沢さんが毎年、趣向を凝らしているグローブ座でのライブのサウンドが反映されている気がしますよね。そしてアルバムの最後に収められている「Goodbye」ですが、タイトルの「Goodbye」というのがちょっと意外だったのですが、この楽曲はどういうところで作られたんですか?

黒沢: いろんな曲があるんだけど、最後を締める曲がないねと、「Dreams」で終わっちゃうと何か放り出された感じになっちゃうし(笑)、「Lay Your Hands」でも違うし、どうしようって。
他にも数曲候補があって、もう録ってたんだけど、配信とかの時代になって、曲がバラバラになって、その曲だけ取り出して聴ける時代でもあるんだけど、せっかく今回CDというパッケージとして作って、曲順とかそのアルバムの世界観っていうものを一つの作品として提示出来るチャンスなので、最後の曲にこだわりたいなと思って考えてたんです。
それで家でもう1曲、急遽作ったんですよ。
作って、菊池君に来てもらって、ほぼ昨日出来たから、ちょっとやろうよっていう感じだったんですよね。
そのままレコーディングして、歌入れて出来上がりみたいな。

――は、速い・・・。

黒沢: うん、永井さんなんて、「また新曲録るの!?もう、良いじゃないですか、ある曲の中からで」みたいな、「いやいやいや、楽しいから録りましょう」みたいな(笑)。

――(笑)。

黒沢: この中から選べお前も、みたいな感じだったんです(笑)。
また新曲録るのかよ!終わったと思ったのに!みたいな(笑)。
そういう雰囲気も流れつつだったんですけど。

――そんなふうに作っていたんですね(笑)。

黒沢: ちょっとおもしろおかしく言うとね、でもそんな感じでしたね。

――そういうふうにフッと一晩で曲が完成しちゃったりするんですね。

黒沢: だからそれもタイミングなんですよ。
そんなことやらなくて良い時って出来ないんですよ、きっと。
たぶん既にある曲の中から、それを選んで最後に入れておけよってことになるんですよ。
だけどきっとそれは必要だったから出来たんだなって思うんですよね。

――なるほど、やっぱり不思議な感じで出来てる感じがしますよね。

黒沢: うん、不思議な感じで出来ないとダメなんじゃないかなと思います、音楽なんかは。
今、世の中がいろんなものでわかりやすくなってるし、なんで音楽をやってるのかって言ったら、やっぱり魔法じゃないの?みたいな(笑)、その感じってビックリしちゃうことってあるんですよね。
なんでこんなもの入れたの?とか、信じられん!とか、理屈をいろいろ重ねて行くと理解出来ることもあるんだけど、なんでこんなものが出来上がったんだろうとかってことも、やっぱり楽しみたいし、そういうものが音楽にないと面白くないなと思うんで。

――予定調和だけだったらつまらないのかもしれないですね。

黒沢: 予定調和がつまらないからってわざと外して行くって人もいると思うんですけど、でもそれはわざと外してやって行くっていう予定調和の考え方であって、何かそれもまた違うなという、本当に最後の曲がない、書いてみようっていった時に出来たっていうことはこれが最後の曲だっていう感じを考えるっていうことですかね。
だから今回はメンバーを呼んだのもそうだし、タイトルが決まったのもそうだし、どれも無理してないんですよね。

――なるほど、そういうことなんですね。

黒沢: 「So What?」って曲ってすごくアレンジを丁寧に懲り固めて細かく積み上げた曲なんですか?て聞かれたんですけど、あれってスタジオでみんなに曲を聴いてもらって、じゃあ、をやりましょうって演奏した一発目のテイクがあれなんですよね(笑)。
だからよく曲も覚えてないまま、さぁ、やろうよ!って言って演奏して、良くない?もうこれオッケーじゃない?みたいな、何かそういう瞬発力っていうのが良いのかなと。
でもあぁいうのって何十回やってもあんなふうにならなかったりとかする場合もあるし、一発で決まる時は一発で決まる、でもそれって僕には全く予測が出来ない(笑)。
それは何かみんなその時のタイミングとその感覚が合わさるとあぁなるし、「Rock'n Roll Band」って曲が出来たのも、何だかよくわからないし。

――「So What?」のサビの部分とかすごく緻密に作られているような・・・。

黒沢: ような感じがするじゃないですか、俺もそう思うんですけど、コーラスとかは後で入れたりとかしたけど、あのピアノなんかも後から緻密に入れた感じがしますけど、最初からあぁでしたからね(笑)。
だから演奏しながら、「うわ!こう行くんだ!」って言って、終わった後みんなで爆笑しちゃって、「いや、今の流れすごかったね!」みたいな。

――本当にすごいですね(笑)、それって長年、一緒にやって来てわかりあえてるからこそ出来るんですよね。

黒沢: うん、確かにね、何が来ても、ちょっと余裕があるって言ったら、あれかもしれないけど。

――では今回のアルバムですが、リスナーに聴きどころを敢えて語るならどんなところだと思いますか?

黒沢: すごく自分の中でバンド感を出したのが、以前にバンドで作った「NEW VOICES」っていうアルバムだと思うんですけど、今回はそれに非常に近い感じながら、またひと味違ったバンド感が出てるアルバムだと思うんですよね。
そしてさっき高橋さんが仰ったように久し振りに冬じゃない黒沢健一、アハハハ。
冬じゃないぞ、今回のアルバムは!みたいな。
夏でカーステレオOKですっていう、そういう感じですかね。

――このアルバムは6月に出るので、初夏じゃないですか、これからの季節にピッタリですよね。

黒沢: ピッタリです。

――このアルバムは本当にみなさんに聴いて頂きたいですよね。

黒沢: ぜひ。

――そして7月から4年振りのバンドツアーが始まるんですけれども、確か前回のツアーはギターは黒沢さんが1人で弾かれていましたよね?今回も別の方は入れられないんですか?

黒沢: 菊池君にちゃんと、ちゃんとって言ったらあれだけど(笑)。
僕はあぁいうギターなんで、今回のアルバムのモチーフにきちんとなるような形の、彼自身も今回のライブまで相当ギターを弾いてもらっているので、ちゃんとCDのアレンジのギターを菊池君は弾いてくれます(笑)。

――前回の時は「ギターはいれません(キッパリ)」って言われてたんですよね(笑)。

黒沢: 今回は「V.S.G.P」とか「Alone Together」とか、ここのところ元々自分で作った曲を実験的に崩して、こんな見方もあるよみたいな、実験作が続いてたので、今回はストレートにCDで聴いたらライブでやるぞ!みたいな、出来る限りそのままやろうかなと。
四の五の、こういう解釈もあるみたいなのは、面倒くさいから無し!みたいな。アハハハ!
CDを聴いて気に入ってくれたら、ライブで爆音でやるぞ!みたいな、そういう感じですね。

――それはライブが楽しみですね。よく考えたら4年振りなんだって感じですけどね(笑)。

黒沢: あっと言う間に。

――楽しみですね。

黒沢: はい、楽しみにして頂けると。
本当このメンバーでやりたかった、俺は良いんですけど(笑)、岡井さんのドラムだったりとか、本当にスケジュールを合わせるのが大変なので、他のメンバーの都合がなかなか合わない人達なんで、平日開催ではあるんですが、ちょっと見ておいてほしいなって感じがしますね。

――すごいライブになるのは見る前から予測が付きますので、これは見なきゃですね。

黒沢: ぜひぜひ。

――ライブも楽しみなところで、それでは最後にみなさんに向けてのメッセージをお願いします。

黒沢: 4年振りのアルバムが出来上がりました。
すごく楽しんで作ったアルバムなので、その感じがみなさんに届けば良いと思いますし、自分がこういう形で作ったものが、聴いて頂いて何か少しでもみなさんが楽しいなって思ってくれれば、それが一番、自分がやりたかったことなので、どういう形でも良いから音楽が届いてもらえたら嬉しいなと思います。

――ありがとうございました。

黒沢: ありがとうございました。

text by Takahashi